第9章 恋の蕾は開花時期

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†沖田side† シュッシュッと刃を磨く鈍い音を聞きながら 視線を庭で遊んでいる里紅に向ける。 茶をいれるや否や庭に池があることに気づき飛び出して行った。 …ガキか。 「柳澤さーん!! この池入っていいですかー?」 「ええ? いいけど何する気だい?」 「ザリガニ取りたいです!!」 「ざ…え? 何? サワガニのことか?」 おいおい嘘だろ。 仮にも曲がりなりにも女だろ…。 「池には絶対入るな。眺めるだけにしろ」 「えー!!」 「上司命令」 「……ちぇ」 俺が注意すると里紅は少しむくれて池の前にしゃがみこんだ。 …危なっかしいからなアイツ…。 「ったく…」 「あのこ…里紅って言ったか」 「あぁ」 「今時珍しい子じゃな」 …まぁ今時の娘じゃねぇしな実際。 驚くのも無理ねぇよ。 俺だってあんなじゃじゃ馬初めてだ。 「色々世話が焼けて大変だよ…」 「お前さんの顔みりゃ分かるわい。でも…一緒にいて飽きんじゃろ」 「……」 俺は親父に言われてふと里紅に視線を戻した。 目をキラキラさせて楽しそうに池を覗きこんでいるアイツ。 …何が楽しいのか全くわからねぇけど。 でも俺はそんなアイツを見て自然と笑ってしまうんだ…。 「違いねぇ」 俺は親父に向かって呟いた。
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