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†沖田side†
『ありがとう』…。
笑いながらそう言った里紅の顔が脳裏に焼きついて離れない。
思い返しては手が止まってしまう。
…稽古中だというのに、気がついたら手が止まってやがる。
「っ…はぁ…」
一旦顔を洗って頭を冷そう。
俺はそう思って井戸へ向かった。
冷たい水で無造作に顔を洗う。
濡れてしまった髪から落ちる雫を眺めながら…俺はまたアイツを思い出して…。
はっと気づいて自分が馬鹿らしく思えてくる。
俺は病気か…?
「…総司」
「! …土方さん」
俺に声をかけてきたのは土方さんだった。
「ちょっと話いいか?」
「いいですけど…その前に山崎さんが探してましたよ」
「それはぁ…お前との話が済んだらすぐ山崎のとこ戻るよ!」
「はあ…土方さんが平気なら…」
俺はいつもとは少し雰囲気の違う土方さんを不思議に思いながら裏庭へ行った。
木の葉が風になびかれる音だけの空間に俺たちは立ち止まる。
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