第1章 …落ちた

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――ミーンミンミンミー… 暑いなか精一杯泣きわめく蝉。 そして時折吹く生暖かい風に誘われて歌う風鈴。 あたしは制服姿で縁側に寝転がりアイスキャンディを食べていた。 あっつぃ…。 流れる汗が止まらない。 「里紅ー! おばあちゃんの遺品整理するから手伝って!」 「ふぁーぃ…」 お母さんにそう言われてあたしはゆっくり起き上がった。 あたしは高木 里紅(タカギ リク)。 ごく一般的な高校3年生。 夏休み真っ只中だったあたしに、先日大好きなおばあちゃんが亡くなったと連絡が入った。 今日はそのお葬式。 おばあちゃんちは田んぼと畑しかない田舎にある。 年期の入った木造の家だ。 この家で一人で暮らしていたおばあちゃん。 高校を卒業したら会いに行く約束をしていたのに…こんな再会になってしまうなんて…。
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