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「ほら」
「あ…ありがとう…」
あたしはぎこちなく返事をしてリンゴ飴を受け取った。
「…沖田熱ある?」
「は…? なんだよ急に」
「いやだって…ねぇ?」
「ねぇじゃわかんねぇよ」
だっておかしいじゃん!?
なんか…!!
「…いつもは怒るじゃん?」
「今日くらいいいだろ…せっかくの祭だしな」
そう言って優しく微笑んだ沖田に少しだけドキッとしながらもあたしは笑みを返した。
そして輝くリンゴ飴にそっと口をつける。
うん! 甘い♪
「……少し休むか」
「ん?」
「行くぞ」
「あっ…」
突然繋がれた片手にあたしの意識は釘付けになる。
再びときめきだした心臓を自分ではどうすることもできない。
大きな沖田の背中を眺めながら あたしはただ手を引かれて人混みを縫うように歩いた。
…やってきたのは人気のない神社の境内。
阿吽の狛犬の前を通り神社の前の階段に座った。
「…どうしてここに…?」
「毎年祭りの時は一人で来るんだよ」
「へぇ…」
あたしは辺りをザッと見回しながら飴を舐めた。
ボロボロに廃れてはいるが どこか神秘的な雰囲気のある神社だ。
…狛犬動き出しそう。
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