act01 日常

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子供を担いでいるオリゲルトと、それにご機嫌そうにイノージュ。イノージュが何度か楽し気にオリゲルトに話しかけるが、それに対して彼は無言か、一言返すのみ。どう見てもこの二人が意思疎通を取れているように見えない。オリゲルトはイノージュを無視しつつ、なんの迷いもなくあと数分で崩れ落ちそうな建物の中を、スタスタと進んでいく。向かう先は、出口ではなく屋敷の奥の方……シェンツァが向かった方だ。 一つの部屋の前で、オリゲルトはぴたりと足を止めた。しかしドアノブに手をかける様子はなく、そこで停止しているだけだった。 その様子に、イノージュが不思議そうにして彼の名前を呼びかける。オリゲルトは反応がなかったが、その代わりに部屋の内側から扉が開いた。 「とにかく!帰ったら部下に任せずちゃんと自分で始末書かけよなラル……うお!?オリゲルト!?」 「ああ?なんだ、いたのかテメェ等」 部屋からでてきたシェンツァとラルフィー。シェンツァは無言で仁王立ちしている不気味な男が突然目に入った為、少し驚いた様子を見せた。しかし、そんなシェンツァは特に気にせず、オリゲルトは担いでいた子供をラルフィーに突きつけた。 大きな瞳から、大粒の涙を流す子供。怯えた様子でラルフィーを見上げる。それに対し、ラルフィーは眉間に皺を寄せて嫌悪丸出しに舌打ちをした。 「なんだぁ?この餓鬼は」 「あのねあのね!ボクが見つけたんだよ!ねぇねぇ連れて帰ろー!」 「連れて帰る、なぁ……」 無邪気に楽しそうに、新しい友人を迎え入れるようにイノージュは飛び跳ねながら言う。ラルフィーの表情とは完全に対照的だ。 ラルフィーはまるで猫を掴むように、子供の襟を掴みまじまじと泣き顔を眺めた。その様子は、まるで品定めをしているようにも見える。 ずっとへの字にしていたラルフィーの口元が、ふっ、と釣り上がる。もしかして殺されないのだろうか、子供の脳裏にその発想が浮かび、ほんの少しだけ生気の戻った顔を見せた。 ---瞬間、ごとり、と床に何かが落ちた。 「却下だ」」
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