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薄暗い月明かりが差す夜。町外れにある大きな屋敷は、夜の静けさを掻き消すように煌々と輝き、炎に包まれていた。
木材で出来た建物は勢いが収まることなく燃え盛り、外壁は所々完璧な黒ずみとなって崩れ落ちている。
そんな屋敷の中を、まるで何も起こっておらず平然と廊下を歩く黒い影達。
頭上から落ちてくる柱やシャンデリア、普通なら焼け死ぬであろう炎達はなんと影達を避けている。
「……ったく、あいつ等派手にやって…。オリゲルト、俺はこっちに行くからそっち頼む」
「…………」
赤い液体で染まった頬を拭いながら、後方を歩いていた影は立ち止まり提案を出した。
しかし前方を歩いていた、オリゲルトと呼ばれた男はそれに対し何も反応せず、淡々と足を前に運んだ。
その態度は既に予想済みだったのか、残された男は小さくため息をつき角を曲がった。
燃え盛る長い長い廊下は、赤色の絨毯に加え、壁には不自然な赤い模様と赤尽くしとなっていた。
その所々に肉塊や臓物が、まるで子供が玩具を散らかしっぱなしにしたように落ちている。
しかし男はそんなことには目もくれず、躊躇なく踏みつけながら廊下を進んでいった。歩く度に浅い泥沼を進むような、生々しい音が鳴った。
ふと、男の鮮やかな橙色の瞳が、不自然に燃えていない扉に目が止まった。
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