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真っ黒な服装とは対照的な、少し血の気のない腕が伸び、ドアノブに手をかける。
その瞬間、つんざくような銃声と共にドアに穴を開けて弾丸が男を目掛けて飛んできた。しかし、何も驚いた様子もなく、軽く首を傾けるだけの動作でその高速に動く小さな弾を避けてしまった。
そのまま何もなかったようにドアノブを回し、中を覗く。
「チッ…、外れたか」
「……一応仲間なんだから狙うなよラルフィー…」
やはり不自然に燃えていない部屋の中で、硝煙の臭いと煙草の身体に悪く中毒症のある臭い。そして極めつけに何か独特な臭いが入り交じり、男は思わず眉を潜めながら手の甲で少し鼻を抑えた。
銃を打ち、舌打ちまでもしたラルフィーと呼ばれた男は何も悪びれなく、寧ろ蔑むように失笑を口に浮かべた。
「はっ、仲間なんざよく臭い台詞軽々と言えるなぁシェンツァ。
………あ?何でテメェがこっちにいんだよ。お嬢サマの側でへらへらやってろよ」
「そのお嬢さんが心配して俺達を寄越したんだよ。予定時間オーバーし過ぎてんぞ…。
…………それより。任務中何してんだよ、こんな場所でそんな格好して」
「あぁ?」
何か文句あるのか、と言いたげに鋭い深緑の瞳で睨むラルフィーの格好は、半裸だ。あちらこちらに切傷や銃弾が身体を貫いた後、生々しすぎる傷跡が浮き出ている身体に纏うものは何もない。
部屋のベッドに腰掛けているラルフィーのものであろう黒いコートやインナーが無造作に床に落ちていて、シェンツァは更に呆れた。
「その上煙草なんていつから持ってたんだよ……。お嬢さんに知られたら、お前が俺のターゲットになるとかが有り得てくるぞ…」
「はっ、逆になってくれた方が楽しそうだけどなぁ?」
「……勘弁してくれ…」
シェンツァは寂しそうに落ちていた服一式を拾い上げ、ラルフィーに投げて渡した。
受け取ったラルフィーは口に加えていた煙草を吐き捨て、インナーに袖を通す。
「つか、本当何やってたんだよ」
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