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首元に大鎌を突きつけられたイノージュだが、一瞬驚いたものの反応は恐怖等ではなく拗ねたものだった。弾力がありそうな頬を大きく膨らまし、口を尖らせ眉間には小さくしわを寄せて数十センチの慎重差があるオリゲルトを、大きく迫力の無い瞳で睨んだ。
「……行くぞ」
「はぁ~い……」
鎌を下げ、歩き出したオリゲルトについていこうとイノージュは小さく足を踏み出した。しかし、数歩歩いただけですぐに「あ!」と大声を出して体の向きを半回転させ、一点を目指して走り出した。
オリゲルトはそれについていかず、腕を組んでイノージュの行動を見ている。
小さな子供が一直線に駆けていった場所は、片方の脚が壊れ崩れている大きなテーブル。そのテーブルを「えいっ」とやはり場違いな可愛らしい声でひっくり返した。
そこから現れたのは、小さな体を更に小さく縮こまらせ大きく震え上がり、大粒の涙を零す子供の姿が。
「ひ…っ」
「ねえねえ!ボクと同じぐらいの子いたんだよ!!」
がたがたと体の震えを止めない子供と、嬉しそうに頬を緩ませ笑顔を見せる子供。全く真逆の反応を見せる子供達。足を止めていたオリゲルトはその二人を見て、そちらに向かい足を運んだ。
そして震える子供の前で足を止め、オリゲルトは何のためらいもなくその子供を俵のように担ぎあげた。
「……ひ、ぃ!?」
「わあい!連れてくの?」
「……こいつの処理は奴の判断次第だ……」
「えー…確かにラルフィーが今日のリーダーだけどさぁ~…」
再び口を尖らし、機嫌を損ねるイノージュ。
オリゲルトの後ろについて歩いているので、上を見上げると彼が担いでいる子供とばっちりと目が合った。イノージュは嬉しそうにその子供に手を振るが、子供はそれに反応する事は無かった。その子供の視線の先は、床に散らばった人の成れの果て。それを生気のない瞳で涙を流しながら見つめている。
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