五十嵐圭吾、29歳。

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会社の入口を入って、エレベーターを待とうとその前に立った。 その時、斜め前に立っていた女性が、ふらっと倒れそうになって、咄嗟に支えた… あっ… 『……スミマセン……。』 『大丈夫ですか?』 と、言いながら彼女の手をしっかり握って起こそうとした時… 彼女の薬指に触れた… (ない……結婚指輪がない……) 『スミマセン…、あっ…大丈夫です。本当に大丈夫です。ありがとうございました。』 と、彼女は俺の手を離して、頭をさげた…。 柔らかい笑顔で…。 あの頃と同じ笑顔で…。 会いたくて、会いたくてたまらなかった笑顔で…。
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