◆例えば、それが…

2/8
620人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
  ―― イタリア 某所 ―― ALL キュイラス side 『昔々、ある所に』…なんてフレーズはたくさんある。 もし、そのお決まりにそって話を進めるとしたら…。 昔々、ある所に自分の生まれを嘆く男がいました。 その男は、由緒正しい家の跡取りとして生まれ、何不自由なく暮らして来ました。 ですが、男は…煌びやかな上流社会に生まれた事を、ずっと胸の内で嫌悪していて、いつかはこの運命をねじ曲げ、自分の力だけで生きて行きたいと強く思っていました。 ですが…。 男は…温室育ちには変わらず、長年に渡って仕込まれた、上流社会の生き方が身に染みていて…その枷を外す事が出来ずにいました。 そんな男は、密かに憧れる存在がいます。 「よぉ、キュイラス! お疲れ顔でどうしたー?」 男が憧れる存在は、赤い目をした男。 「アレウス…お前ね、不法侵入だよ」 「ンなモン知った事かよ」 赤い目の彼は男の親友。 彼は正に自然の中に生きる鳥のような存在。 今を精一杯楽しそうに生き、自分がやりたいと願う事を叶えるべく奔走する……男がやりたいと願う事を容易くやってのける、とても…とても眩しい存在でした。  
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!