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―― イタリア 某所
―― ALL キュイラス side
『昔々、ある所に』…なんてフレーズはたくさんある。
もし、そのお決まりにそって話を進めるとしたら…。
昔々、ある所に自分の生まれを嘆く男がいました。
その男は、由緒正しい家の跡取りとして生まれ、何不自由なく暮らして来ました。
ですが、男は…煌びやかな上流社会に生まれた事を、ずっと胸の内で嫌悪していて、いつかはこの運命をねじ曲げ、自分の力だけで生きて行きたいと強く思っていました。
ですが…。
男は…温室育ちには変わらず、長年に渡って仕込まれた、上流社会の生き方が身に染みていて…その枷を外す事が出来ずにいました。
そんな男は、密かに憧れる存在がいます。
「よぉ、キュイラス! お疲れ顔でどうしたー?」
男が憧れる存在は、赤い目をした男。
「アレウス…お前ね、不法侵入だよ」
「ンなモン知った事かよ」
赤い目の彼は男の親友。
彼は正に自然の中に生きる鳥のような存在。
今を精一杯楽しそうに生き、自分がやりたいと願う事を叶えるべく奔走する……男がやりたいと願う事を容易くやってのける、とても…とても眩しい存在でした。
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