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「キュイラス、茶くれ、茶」
「自分で淹れなよ…」
「………マジで大丈夫か? 少し痩せたんじゃねぇ?」
あぁ、なんて生き生きとしているんだろう。
彼に会う度に、男はそう思います。
自分は…やりたい事を実現する力がない。
けれど、彼は次々に夢見た事を現実にしていっている。
いつしか、男は…太陽を直視出来ないのと同じように、眩しい彼から目を逸らしていたのです。
「お前には関係ないだろ。 用があるならさっさと言えよ」
愚かな男だ…。
男は、彼に嫌悪する自分が何より嫌だった。
「おう、んじゃ、率直に言うけどよ。 お前の力を貸してくれよ」
「はぁ? 金ならやらないぞ」
「そうじゃねぇって。 一緒に組織を作ろうって言ってんだ、お前が副官なら俺も安心だしよ!」
あぁ、なんて真っ直ぐなんだろう。
彼は昔から混じり気のない純粋な気持ちをぶつけてくる。
男には…俺には…これが眩い原因でもあった。
「俺が…お前の…? ふざけるな、俺はスキアヴォーナ家の跡取りなんだぞ…!」
俺は…お前みたいに、自由には飛べない、カゴの中で丁寧に飼い慣らされた鳥なんだ。
カゴの外に出る勇気なんてあるわけない。
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