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がぁぁ…ん!!
がぁぁ…ん!!
ハンマーがピアノに振り下ろされる度に、男の中の分厚い壁が壊されて行く。
やがて、ピアノは…ものの5分で瓦礫と化した。
男と言えば…。
「ありがとう…ありがとう、アレウス…。 これで…これで…!」
久し振りに、生きた涙を流していた。
「…行くぞ、キュイラス。 たった今からテッペンに着くまで休む暇はねぇ」
それから、男は慣れ親しんだ家を捨て、彼と共に世界を走り回った。
慣れない裏社会。
聞き知らぬ言葉。
命を賭ける駆け引き。
決して楽ではなかった。
だが、男は…光を見せてくれた親友の夢を叶えるべく、何の支えもなしに、自分の足で立ち、歯を食いしばって、親友の後を追い続けた。
そして…。
「キュイラース、茶くれ、茶」
「不法侵入だぞ、アレウス」
「ここは俺のRIVIROだぜ?」
「俺のRIVIROでもあるよね?」
「…ごもっともデス…」
昔々、ある所に自分の生まれを嘆く男がいました。
「つーか…ピアノ…買ったのか?」
その男は、カゴの中の鳥。
丁寧に育てられたカゴの中の鳥。
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