夏のおわり

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「わ、あっ、虹でた!」 ハッキリと聞こえた声。 突如、1人の男が顔を上げた。 俺んとこからも見える虹は うっすらとだけど綺麗で。 俺が虹を見れば その先には虹を見つめる男。 ちょうど直線になる場所。 顔を上げたからこそ 分かったこと。 少しだけ垂れた目。 シュッとした鼻。 小さな唇。 あどけない、って言葉が 似合うその顔立ち。 だけど薄い茶色の髪は 水に濡れていて 滴が零れて頬を伝ってく。 それが、なんだか綺麗で。 でも虹を見て目を輝かせてる そいつは俺と比べものに ならないほど虹に感動してて。 きっと、その先の俺なんか 少しも目に入っていない。 ‥‥別にいいんだけど。 …でも、ふんわりと そいつが微笑んだ瞬間 ドキッと心臓が鳴った。 一瞬、頭を過ぎった感情。 思わずそいつから目を離して。 N「馬鹿じゃねーの、俺…」 独り言で紛らわせる。 虹よりも、そいつのほうが よっぽど綺麗だなんて。 微笑む姿が可愛いだなんて。 ばっかみてー。 N「‥‥でも気に入った」 名前も学年も知らないけど。 初めて一瞬のうちに 綺麗で可愛いって思った。 話してみたくなった。 虹じゃなく俺を 見てほしいと思った。 N「明日会いに行こっかな」 俺は右手で銃を作ると そいつに向けて 撃つフリをした。 笑顔を浮かべて。  
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