雄一少年を探せ!

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研は野山の丘に座っていた。春は始まったばかりで地面からはつくしがつきだしていた。それを20個も網にのせるとキャロンの元へ戻った。 「なまこわんわん」 「ほらこんなに集まったよ。凄いだろ。僕が一番多いんだから」 こぼれないように持っていき見せてやった。キャロンは帽子を取った中から草の葉で出来たブローチが出てきた。それを頭に付ける。 「あら、夕飯のおかずね。きっと美味しいわん。そうだ、ママとパパを探さなくちゃ」 すっと立ち上がると谷へ降りて行った。直後に悲鳴が聞こえた。研も立ち上がろうとしたのだが、触手に押さえつけられ動けなかった。 「キャロン!!!」 目覚まし時計が地面で鳴っていた。ほっと胸を撫で降ろす。普段は夢を見るほうでは無いのである意味恐怖を感じていた。 黒電話が鳴った。受話器を取る。吉坂博士からだ。 「いろいろ話がしたいんじゃが」 研はスカイロッドを彼に預けたままだった。だから徒歩しか交通手段が無い。まあ、キチビクすれば空ぐらい飛べるのだが。 「チャージングGO!」 決まり文句を叫ぶとチャージマンに変身した。これで飛躍的に早く移動ができる。カドロシューズを噴射しコンクリートから離れていった。いつも住んでいる場所から離れ吉坂先生のいる高級住宅街へ向かった。 「先生、みなしごビームは出来上がりましたか?」 「それがな…」 魂の抜けた声でつぶやき、屋敷の門を開ける。研は噴射を止めていたので歩いていった。吉坂博士は昼食を用意するからと書斎に連れて行ってくれた。二人を合わせても足りないくらい背の高い本棚がみっちり生えていた。しばらくして執事が宇宙食のような銀パックのものを渡した。恐る恐るキャップを外すと中から甘い匂いがした。 「苺とりんごとバナナとブドウの味がします」 「そうか、そうか。他にもあるから持っていきなさい」 食堂らしきほうを指す。そして博士は文献を机の引き出しから出した。真ん中のページを開くとパラパラと付箋が落ちた。 「みなしごビームの話だが、もう諦めてくれ。致命的箇所が25もある。わしもこの研究を止めようと思っている」 「それじゃ…」 「完成したとして5年はかかるだろう」 そう言い、吉坂は先ほどの昼食とも言い難い物質を押し付け研を追い出した。その後三時間目から学校へ行った。偶然国語の時間だったので楽できた。でもその後は覚えていない。吉坂博士のほうも悪かったと思っているだろう。
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