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せっかく南極遊園地まできたのだから遊んでいこうと思う。ここには前パパとママ、そしてキャロンと遊びに来たことがある。目的はもちろん観光だ。たまに社会見学に行くこともあるけどそれとは違う。
ここでやれるのは氷滑りやアザラシに乗ってレースをしたり、ペンギンと戯れることだけだ。他にはこれといって無い。けれどもなぜか楽しいのは家族で行けるのと自分が子供だからだろう。
「これっぽっちしか無いや⑩⑩」
ふところを探るとそれだけだ。ああ、神様お金を恵んでくだされ。
「いいよ、特別に入れてあげましょう」
受付員のきれいなお姉さんが入り口を通してくれた。ずいぶん白い肌をしているのはジュラル星人だからだろうか?
「ありがと―」
笑いながら両手を上げ、ウキウキステップで門を開けた。最初に目に入ったのはやはり氷滑りだ。ペンギンを抱いている幼児が多い。上手く坂の上からつるつると降りている。
「よーし僕もやるぞ」
前に一度やったことがあるのでわかる。とにかく大事なのはバランスだ。そうれ、の勢いで動いた。…が下手に転んでしまい氷に頭をぶつけた。
「エヘヘ、いっけね」
「こら、さっさと雄一を探す!」
「何だとこの鬼ババ」
「息子が消えたのはお前のせいだ」
「ガバガバ言うんじゃねぇ」
熟年夫婦がにらみあっていた。大声でしゃべっていたので野次馬に取り囲まていた。なんと探しに探し続けた雄一少年の名が見つかるとは。一瞬彼の面影がよみがえる。
「今どこにいますか」
「さっきの話を聞けばわかるだろが」
「行方知らずってこと?」
「痴呆警察に聞いても『知らんな』だとさ」
「もう嫌になっちゃうわよ」
雄一君の母親はその場で座り込む。よく見るとなかなかの美人だ。
「あの―僕で良ければ助けてあげたいんです」
研は顔に擦り傷を作りながら上目遣いで言った。そもそも家を周って放火しまくっていた雄一のことをだんまりしようしたのは自分のせいだ。年下であったし痴呆警察に通報したく無かった。
「んふぅ。君はジャラル聖人をバシバシ懲らしめてる奴だろ?」
「はい、悪い奴を倒すのは趣味…正義の味方の仕事ですからね」
「とんでもねぇガキだ」
研の首根っこをおもいっきり締め上げた。
「ングググ………お許しください!」
「こうなったら雄一だ。雄一を探せ」
「ハァハァ」
研は急いで家へ帰った。玄関に入っても呼吸は荒く乱れたままだ。
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