雄一少年を探せ!

5/7
前へ
/17ページ
次へ
先ほどビームと間違えて押したボタンを使って上昇した。意外と丈夫らしく、きちんと動いた。 「僕は簡単には死なないんだ」 海上に潜水艦の頭を出すと本部へ無線で連絡した。ジュラルは居たが混乱しているらしく、散った感じにどこかへ消えてしまったと。 「魔王がいたはずだろう?逃げたのか?」 向こうの男が質問してきた。たしかにあの宇宙人だけは形もちがい体格も大きい。水の中にいたらどうなるかわからない。 「魔王…これで倒せた…」 正義の味方がこの事態を放置するのではないか。ものの見ようではそうしたほうがヒーローぽくもある。 「地球の皆さん、敵方のボスを助けます。悪いことな気がするけど雄一君のことを探すには必要なんです。目をつぶってください」 海底調査局から潜水艦を借り直した。修理中のc-3号に乗った。他は海に出ていて代わりは無いのだ。調査員は研に大分慎重に扱ってくれ、湯豆腐のようにもろいと説明した。 「行くぞ、c-3。かわいそうな魔王を助けるんだ」 10分はかかった。もう死んでいかもしれない。調査員の言うとおり下へ沈むとどんどんミシミシ音を立てるようになった。基地に近づくと窓から侵入した。魔王は床に倒れ息をしていなかった。体を潜水艦に移動させ乗せた。 「魔王、しっかりしてください!!!」 返事は無い。再び潜水艦を上昇させる。しかしさっきと起動音が違う気がする。型が一緒では無いからだろうか?海底調査局に着くと立ち上がり魔王を抱えた。子供の力では重く無理がある。一度だけ持ち上げた。拍子にひどくこけてしまった。空気の音がする。窓の外を見ると衝撃の出来事が起きていたのだ。海底調査局がもう見えないほど潜水艦が宙に浮いていたのだ。 「くそ、こんなときに!!!!!」 けれど予想に反して潜水艦はある場所へ向かっていた。それは国民病院だ。ここはよく知らないが日本で、いや世界有数の高度治療を行える場所である。研の父親は医者だからそういうのに詳しかった。暴走した艦は二階の窓ガラスを割って病室に滑り込んだ。キチビクをして魔王を運び出す。最初からそうすれば良かった。 「治してください!」 「礼儀知らず!ロボットぐらいちゃんと扱え!!!」 「死にそうなんです」 「俺は医者では無くて患者だからな」 足に包帯を巻いた紳士はベッドに座るとボタンを押した。そのあとは雑誌を読み知らん顔をした。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加