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「はい、撲殺です」
凶器は、金属製のスパナなどの工具とみられ、現場周辺からは発見されていない。
死亡推定時刻は、午後六時三十分前後。
事務所を出て、階段に休憩に行ったのは六時過ぎであり、それから三十分後に殺害された事になる。
「それで、第一発見者の警備員は、殺害の瞬間や容疑者は見ていないのか」
「残念ながら、それは」
「だが、防犯カメラには録画されているだろ」
「はい。ただ今、現場にて確認中です。それから、警備員に連絡して、その時にビル内に残っていた人間の、帰宅を止めてあります」
「ならば犯人は、ビル内に残っているな」
本部長は、機嫌良く膝を叩くと、「柿崎に任せるか」と言い出した。
事件は、解決の目星がついている。
県警の切れ者。柿崎警視に任せて、本日中にケリをつけさせようというのだろう。
柿崎は、ただちに現場に急行した。
ビルの一階では、近隣から派遣された交番勤務の警官が、足止めされて文句を言う人々の対応に追われていた。
それを見て、柿崎は足を止める。
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