第一章 容疑者確保

5/42
前へ
/65ページ
次へ
  「はい、撲殺です」  凶器は、金属製のスパナなどの工具とみられ、現場周辺からは発見されていない。  死亡推定時刻は、午後六時三十分前後。  事務所を出て、階段に休憩に行ったのは六時過ぎであり、それから三十分後に殺害された事になる。 「それで、第一発見者の警備員は、殺害の瞬間や容疑者は見ていないのか」 「残念ながら、それは」 「だが、防犯カメラには録画されているだろ」 「はい。ただ今、現場にて確認中です。それから、警備員に連絡して、その時にビル内に残っていた人間の、帰宅を止めてあります」 「ならば犯人は、ビル内に残っているな」  本部長は、機嫌良く膝を叩くと、「柿崎に任せるか」と言い出した。  事件は、解決の目星がついている。  県警の切れ者。柿崎警視に任せて、本日中にケリをつけさせようというのだろう。  柿崎は、ただちに現場に急行した。  ビルの一階では、近隣から派遣された交番勤務の警官が、足止めされて文句を言う人々の対応に追われていた。  それを見て、柿崎は足を止める。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

227人が本棚に入れています
本棚に追加