第一章 容疑者確保

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   本来それは、所轄署の警察官の仕事でもある筈だ。 「千葉西署の署員は?」 「警視。西署は今、例の事件で手一杯ですから」 「あぁ、そうでしたね。あちらの事件は、どこまで進展したのでしょう」 「まだ、少しも……」 「では、こちら余計に急がなければなりませんね。こちらは、千葉北署の刑事課にお願いしましょうか。それと、酒出警部補に連絡を」 「はい。北署には、連絡を入れておきます」  柿崎の部下は、意味深な言い方をした。  そもそも、いかなる事件の最中であろうと、殺人事件が発生した可能性があるのに、現場の捜査員が手薄なのは大問題だ。  その為、柿崎自身が文句を言う人々の前に立ち、深々と頭を下げて事情を説明した。  それで、事態は収拾する。  文句を言っていた人々は、それぞれに自分の会社へと帰っていった。 「では、行きましょうか」 「はい、警視」 「ところで、酒出警部補はどうしました?」 「警部補は、本日非番です」  柿崎は、小さく息を吐く。  警察官たる者、非番でも何とやら。
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