第一章 容疑者確保

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   そういった風潮は、今も残っている。  国民の安全を守るべき警察官だから、重大事件の最中ならばそれも当然だが、何もなければ非番を取るのは警察官の義務だ。  今回の事件は、酒出の手を煩わすまでもない。  万全を考えるあまり、酒出に頼ろうとした。 「連絡しても、あの人は出ないでしょうね」 「今日の非番は、家族サービスだそうです」 「でしたら、警部補にはメールだけ入れておいて下さい。長引くようなら、非番明けから合流してもらいましょう」 「了解しました」  柿崎の部下は、歩きながら携帯電話を取り出し、液晶を見ずに文章を作り出すと、それをそのまま送信した。  そして、柿崎と共にエレベーターに乗り込む。 「しかし、自社ビルだというのに、十五階にオフィスとは珍しいですね」 「どうも、創業者の方針だそうです」 「方針ですか?」 「はい、何でも自社ビルだろうが、オフィスはなるべく高い階に入れるべきだと」  それならば、最上階にするべきだという話しもあるが、最上階では業務に支障をきたすとか。
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