第一章 容疑者確保

9/42
前へ
/65ページ
次へ
   捜査員と警備員は、そこばかりを繰り返し再生し、犯人の特定をしようとしている。  映像は、そこそこにクリアであった。  曽根崎 真美の顔は、映像から十分に確認ができる。  一方、犯人の映像。  黒系のスーツ姿で、スカートは膝丈のタイトなタイプ。黒のセミロングの髪は、前髪がストレートにカットされ、うつむき加減の為に表情は陰になっている。  人相の特定は、難しそうだ。 「すいません。犯行直前三分前から、直後の三分間の映像を見せてくれませんか」 「はいっ、ただ今」  警備員は、その柔らかい口調に好感をもったようで、柿崎の要望にすぐ応えた。  階段に腰かける被害者。  しばらく、その体勢のままで動かずにいる。  約、三十秒。  被害者が、何かに気付いて上を見上げると、次の瞬間に立ち上がった。  防犯カメラの映像に音声は無い。 「恐らく、足音に気付いたのでしょうね」  柿崎は、小さく呟く。  その直後、黒スーツの女が階上から降りてきて、曽根崎 真美の前でしばらく佇んだ。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

227人が本棚に入れています
本棚に追加