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女が、右手を振り上げる。
階段の照明に照らされ輝く、スパナが銀色の弧を描いて被害者の頭に振り降ろされた。
階段の踊り場から、バランスを崩す被害者を女は体当たりをするように押した。
被害者は、階段を転げ落ちたのだろう。
その姿までは、死角の為に映っていない。
柿崎は、警備員に聞く。
「こちらの、黒いスーツの女性ですが、こちらのビルの関係者でしょうか」
「恐らく……」
「恐らくとは、思い当たる人物がいらっしゃるのですね」
「似ている方がいます」
そう言った警備員は、警備室のモニターに映った黒いスーツの女を、再び確認し柿崎に向かって頷いた。
これならば、事件は早期解決できる。
柿崎は、確信に満ちた顔で部下に指示を出した。
だが、事件は終わらない。
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