第一章 容疑者確保

13/42
前へ
/65ページ
次へ
   千葉北警察署というより、警察組織全体のお荷物ながら、持ち前の幸運で刑事を続ける男。  ラッキーボーイ。  ただ、運だけでここまで来た彼は、明らかに役立たずであった。  社会人不適合者。  方向音痴。  ミステリーファン。  思い込みが激しい。  ミステリーファンである事は別にしても、それ以外の条件で、どうにも刑事に不向きと思われる。  事実、向いていない。  そんな酒口は、暇になると北方に絡んでくる。  着任当時、北方は「ラッキーボーイ」と、酒口をからかったものだが、近頃では面倒になり「酒口」と呼ぶようになった。  それが、彼を調子にのせた。  ラッキーボーイから、酒口と呼ばれる事で刑事として、北方から認められたと思い込んだ。  少し前まで、自分が役に立っていないと、悩んでいた事も忘れてしまったらしい。  お陰で、北方によく絡む。 「酒口と呼ぶの止めるかな」 「えっ、北さん。そんなぁ」 「そうだ、いい呼び方があったじゃねぇか」 「えっ、いい呼び方ですか?」
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

227人が本棚に入れています
本棚に追加