プロローグ

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   千葉市花見川区、幕張町のオフィス街。  夕暮れ時はとうに過ぎ、乱立するビル群には明かりが灯っている。その明かりが、辺りをぼんやりと照らしている。  街の明かりは、その数だけ生活があるという。  しかし、ここはオフィス街。  明かりの数だけ、ビジネスがあるといったところか。  実際には、明かりの数と人やビジネスの数は比例しないが、それをどうこう言うのは、不粋と言うものかもしれない。  そんなビルから、人々が吐き出され始めた。  夕方の六時。  十二月に入り、この時間ともなると辺りは完全に暗くなる。  そして、駅へと向かう人々は寒さのあまり、背を丸めて首をすくめて足早に歩く。  この人々は、定時で仕事を終えて家路につくのだろう。  中には、飲みに行く人もいるかもしれない。 「ちょっと、休憩しようかな」  あるビルの十五階。  保険会社のオフィスの窓から、一人の女性が人々を眺めて呟く。そしてオフィスを出ると、エレベーターホールから階段へと向かった。  曽根崎 真美。
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