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何も起こらないムード。
それを感じていたのは、刑事課の中では酒口ただ一人であった。
逆に、他の全員が何かが起こりそうな予感を感じ、口をつぐんで何かを待っている。
そんな事は、まず珍しい。
第六感。
虫の知らせ。
そうしたものと、並び称されている「デカの勘」が、全員に同時に働いているのか。
デカの勘というより、何か起きそうな雰囲気が漂っているだけだろう。
三十分後、電話が鳴った。
「はいっ、刑事課」
矢次が、勢いよく受話器を持ち上げて、次の瞬間に声に緊張を含ませる。
電話の相手は、柿崎警視の部下のようだった。
すぐに、スピーカーに切り替えた。
『千葉西署管内、スマイル一番生命ビルで、転落事故が発生。ですが事件性が高く、殺人事件の可能性があります』
「転落事故で、殺人ですか?」
『お聞き及びの事と思いますが、西署管内では毒物飲料事件の為、人手が足りません。応援、願えますか』
「勿論です」
北署の刑事たちは、弾けるように飛び出していった。
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