第一章 容疑者確保

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   何も起こらないムード。  それを感じていたのは、刑事課の中では酒口ただ一人であった。  逆に、他の全員が何かが起こりそうな予感を感じ、口をつぐんで何かを待っている。  そんな事は、まず珍しい。  第六感。  虫の知らせ。  そうしたものと、並び称されている「デカの勘」が、全員に同時に働いているのか。  デカの勘というより、何か起きそうな雰囲気が漂っているだけだろう。  三十分後、電話が鳴った。 「はいっ、刑事課」  矢次が、勢いよく受話器を持ち上げて、次の瞬間に声に緊張を含ませる。  電話の相手は、柿崎警視の部下のようだった。  すぐに、スピーカーに切り替えた。 『千葉西署管内、スマイル一番生命ビルで、転落事故が発生。ですが事件性が高く、殺人事件の可能性があります』 「転落事故で、殺人ですか?」 『お聞き及びの事と思いますが、西署管内では毒物飲料事件の為、人手が足りません。応援、願えますか』 「勿論です」  北署の刑事たちは、弾けるように飛び出していった。
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