第一章 容疑者確保

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   真美が、聖人君子とは言わない。  逆に、聖人君子のような人物であれば、悪人から恨みを買うだろう。  だが、憎めない人間というのは、どうしても敵を作りにくい性質を持つ。  真美も、そんな人物だろう。  北方としても、矢次を諭したものの真美を殺害する動機を、その参考人に聞いてみたい気分になった。  そして、事情聴取に戻る。  真美の交友関係は、他社の人間だけに留まらず、出入りの業者や近隣の飲食店の店員にまで及ぶ。  それを証言したのは、このビルの清掃を請け負っている、業者の女性であった。  もしも、参考人が加害者で無かったら。  それだけ膨大な数の関係者に、再び聞き込みをしなければならなくなる。参考人は、あくまでも参考人であって、容疑者でも無ければ犯人でも無い。  北方は、特に仲の良さそうな女性清掃員に、より細かく曽根崎 真美の人となりを聞いていた。  次々と、人々が帰宅する。  北方たちの事情聴取も、ようやく先が見えてきた。      
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