第一章 容疑者確保

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   今日は、珍しい。  そう思いながら、酒出は明子に「心配ない」と言い含めた。  良くできた嫁と言おうか、明子は酒出を全面的に信じているから、酒出に言われれば何も言い返さない。  何せ、家では酒を飲まず、良い夫であり良い父だからである。  勤務中の彼とは正反対。  流石に、明子は勤務中の酒出の姿など知らない。  非番の前日には、極端に酒の量を制限し、志津香との休日を酒臭い息で過ごしたりもしない。  それを知るのは、明子くらいの事であろう。 「今日も、飲むの?」 「あぁ、何かありそうなんだよな。首の後ろ辺りが、チクチクとしやがる」 「あっ、刑事の顔」 「あぁ、悪い。そんなに、恐い顔をしてたか?」 「ううん、そんな事ない。滅多に見せてくれないけど、そんな顔をしたあなたも好きよ」 「参ったな……」  酒出は、短い天然パーマの髪に指を突っ込み、照れ臭そうに掻いている。  これが、酒出夫婦の形。  彼の大酒飲みも勤務態度についても、明子の心配のタネながら、それを受け入れている。
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