227人が本棚に入れています
本棚に追加
今日は、珍しい。
そう思いながら、酒出は明子に「心配ない」と言い含めた。
良くできた嫁と言おうか、明子は酒出を全面的に信じているから、酒出に言われれば何も言い返さない。
何せ、家では酒を飲まず、良い夫であり良い父だからである。
勤務中の彼とは正反対。
流石に、明子は勤務中の酒出の姿など知らない。
非番の前日には、極端に酒の量を制限し、志津香との休日を酒臭い息で過ごしたりもしない。
それを知るのは、明子くらいの事であろう。
「今日も、飲むの?」
「あぁ、何かありそうなんだよな。首の後ろ辺りが、チクチクとしやがる」
「あっ、刑事の顔」
「あぁ、悪い。そんなに、恐い顔をしてたか?」
「ううん、そんな事ない。滅多に見せてくれないけど、そんな顔をしたあなたも好きよ」
「参ったな……」
酒出は、短い天然パーマの髪に指を突っ込み、照れ臭そうに掻いている。
これが、酒出夫婦の形。
彼の大酒飲みも勤務態度についても、明子の心配のタネながら、それを受け入れている。
最初のコメントを投稿しよう!