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酒出は、家族を一番に考えている。
妻と娘との生活を守る為ならば、服務規程だろうが業務命令だろうが、平気で無視する事ができる。
そして酒臭さも仕事も、なるべく家庭に持ち込まないようにしている。
酒臭さは、だいぶ持ち込んではいるのだが。
「そうだ、たまには二人で飲みに行くか。一旦帰って、志津香を寝かしつけてから」
「ううん、志津香が目を覚まして、一人ぼっちだったら可哀想だから」
「そうか、そうだよな」
家族を乗せた列車は、酒出家の最寄り駅へと到着した。
酒出は、眠ったままの志津香を背負い、駅前でタクシーを拾って自宅に帰る。
そして、志津香を起こさないようにベッドに寝かせると、そのまま自宅を出て馴染みの小料理屋に向かった。
小料理屋 小路。
女将と板前の二人だけで営んでいる、小さな小料理屋である。
「酒出さん、いらっしゃい。あらっ、今日は非番だったんですね」
「おうっ、娘とディズニーランドに行ってきてな」
そんな挨拶を交わし、カウンターのいつもの席に座った。
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