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酒出が、「ふぅ」っと息を吐く。
女将は、酒出が新たな事件を感じ取り、厳しい表情を浮かべている事を瞬時に見抜いた。
「幕張の方で、毒物飲料事件が起きてますけど、それが引っ掛かってます?」
「まぁ、それもな……」
「それもって事は、他にも事件がありそうですね」
「さぁ、どうかな」
酒出は、いつも通りに出された大ジョッキのビールを、一気に飲み干して見せた。
父として、成すべき事を成したからこそ、そうした顔ができるのであろう。
事件は、発生している。
その情報は、彼に伝えられていながらも、酒出自身の中で受け取ったのは、ついさっきの事であった。
一流企業での殺人事件。
メールによると、酒出が帰宅途中に発生した事件である。
重要参考人は、既に確保済みだとか。
後は、事実関係を確認をし、立件に向けて捜査を重ねていくだけであろう。
ほぼ、解決している事件。
こうした事件の場合、酒出が乗り出す事はこれまで一度も無かった。
解決しているのだから、当然の事。
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