第一章 容疑者確保

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   酒出が、「ふぅ」っと息を吐く。  女将は、酒出が新たな事件を感じ取り、厳しい表情を浮かべている事を瞬時に見抜いた。 「幕張の方で、毒物飲料事件が起きてますけど、それが引っ掛かってます?」 「まぁ、それもな……」 「それもって事は、他にも事件がありそうですね」 「さぁ、どうかな」  酒出は、いつも通りに出された大ジョッキのビールを、一気に飲み干して見せた。  父として、成すべき事を成したからこそ、そうした顔ができるのであろう。  事件は、発生している。  その情報は、彼に伝えられていながらも、酒出自身の中で受け取ったのは、ついさっきの事であった。  一流企業での殺人事件。  メールによると、酒出が帰宅途中に発生した事件である。  重要参考人は、既に確保済みだとか。  後は、事実関係を確認をし、立件に向けて捜査を重ねていくだけであろう。  ほぼ、解決している事件。  こうした事件の場合、酒出が乗り出す事はこれまで一度も無かった。  解決しているのだから、当然の事。
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