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正確に言えば、解決などしていないのだから、酒出の出番がある筈である。
しかし、そうした報せが届いたとして、彼が動き出す事は無かった。
実際、その直後に解決したから。
電話なりメールなりの報告を受ければ、その段階で自分が出るべきか判断ができる。そして、これまでは出る必要が無かった。
今回も、そのつもりだった。
「しかし、な……」
何かが引っ掛かり、素直に自分が不必要だと言えない何かがあった。
事件は、転落事故と思われていた。
生命保険会社の営業担当社員の女性が、勤務地のビルの階段から転落して死亡した。
だが、事故では無い。
階段の踊り場を撮影している防犯カメラが、被害者女性の殺害現場を捉えていた。
つまり、殺人。
殺害の様子が、防犯カメラの映像に残されていた為、程なくして重要参考人の身柄が拘束された。
普通ならば、事件はこれで終了となる。
それは、酒出も同じ印象。
「だが、どうにも引っ掛かるんだよな……」
酒出は、頭を悩ませていた。
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