第一章 容疑者確保

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   柿崎の部下からのメールは、単なる報告事項とも取れる。  仮に、他の人間からのメールであれば、そのように受け取り美味い酒を飲めた筈。  だが、柿崎の部下なのだ。  緊急性があるのなら、柿崎本人から連絡してきそうなものだし、かと言って酒出の手が不要であるなら、部分にも連絡させないだろう。 「ったく、あのお偉いさん。こんな、余計な事をしやがって」  この事件は、長引く。  それは、酒出の勘では無く、現場を目にして柿崎が受けた直感なのだろう。  その参考人は、犯人では無いのか。 「違うんだろうな……」  この考えにたどり着くまで、生ビール大ジョッキを三杯と、熱燗の大徳利を五本ほど空にしていた。  小鍋仕立ての水炊き。  たらば蟹の天婦羅。  鰤の刺身。  烏賊の塩辛。  いくらおろし。  板前の出してきた肴も、それぞれが一口か二口分を残している程度。  酔っているとはいえ、警察官であるなら店を飛び出し、県警に駆け付けるところだろうか。  ところが、彼は酒出 太志である。
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