プロローグ

4/5
前へ
/65ページ
次へ
   真美の周りには常に人が集まるのだが、彼女は時おり一人である事を望む。  基本は、賑やかな方が好き。  タバコを吸わないのに、狭苦しい喫煙所に顔を出して、仲間や上司と交流を持っている。  トップ生保レディ故の悩み。  人の生き死にや、大きな疾患や怪我に際して、意味を持ってくる保険を扱う仕事だけに、そのストレスは計り知れないものがある。  それに加えて、営業成績に対する重圧。  常に営業所トップであるながらも、全国のトップレディとの比較や、営業所内での教育などストレスの材料は多い。 「あの娘が、もう少しやってくれたらな……」  彼女の中で、思う人物がいるようである。その人物が、もっと頑張れば、自分としても仕事がやりやすくなる。  そう、思っているようだ。  真美は、持ち込んだ紙コップの炭酸飲料を口に含み、いつものように階段に腰かける。  金属製のつづら折りの階段。  非常階段のような、無機質な金属の階段は、冷気を蓄えて真美の尻を冷やしてくれる。  だから、ここで休憩する。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

227人が本棚に入れています
本棚に追加