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冗談じゃない。
ムカついているのは私の方だ。
馬鹿みたい。
自分の価値を女の子で確かめるなんて、どれだけ上等なつもりなんだか。
馬鹿みたい。
その場限りで甘い言葉吐いて、適当に立ち回って、何が楽しいんだか。
馬鹿みたい、馬鹿みたい、馬鹿みたい。
こんな上辺だけの行為で満足できるなんて、どうかしてる。
「その台詞、そっくりそのままお返しするわ」
即答した私に、一晃くんは僅かに眉をひそめて。
それからそれを隠すみたいに、私の首もとに顔を沈めた。
また、ちゅっと音をたてて。
首筋にキスを落とされた。
抱き寄せられて、体が密着状態まで寄り添った。
耳を舐められ、弱く噛まれた。
「痛い」と言って「あっ、そ」と流された。
虚しい。
悲しい。
寂しい。
辛い。
わかってる。
私が望んだ関係だ。
進み方もわからなくて、とにかく繋がりを欲して。
無計画に成立させた、私の為の私による私と彼の関係だ。
「――なんで、お前が俺にムカついてるんだよ」
不意にこぼれてきた拗ねたような呟きに、思わず彼の背に手を回す。
そうして、こちらからもしっかりと抱き寄せる。
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