期待と懸念

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女を抱く際に優しい言葉しか吐かないのは、以前からの俺の主義。 少し乱雑に扱っても、女ってのは甘い台詞に滅法弱い。 高ぶった声を聞いたら、“可愛い”と言いながら更に弄べばいい。 好意を求める恋人ごっこのような問い掛けには、ひたすら同意しておけばいい。 嘘も方便。 よりお互いに有意義な時間を過ごす為には、多少の“盛り”が必要で。 それを忘れず、欠かさずにやっていく事で、心地好い夜を感じられるわけで。 そこに無理は感じなかった。 むしろコロリと騙される滑稽な女を自分自身に“可愛い奴”と思わせる、一種の手段でもあった。 「かずくん優しい」 「かずくん大好き」 女の言葉は麻薬のように、フワフワとした快楽を男に与える。 大した衝動も無い、性欲を満たす為だけに抱く体に。 優しくすることは簡単だった、――っつーのに。 “かずあきくん” “やさしく” 彼女――千晶に優しく触れる度に、チリチリと、獰猛なモノが疼く。 それを抑えてやんわりと触れていく行為には、なかなかに労力が要る。 強いられるのは、自身の抑制。 それでも手放せない存在に抱く感情は、やはり他とは違うらしい。
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