539人が本棚に入れています
本棚に追加
/265ページ
女を抱く際に優しい言葉しか吐かないのは、以前からの俺の主義。
少し乱雑に扱っても、女ってのは甘い台詞に滅法弱い。
高ぶった声を聞いたら、“可愛い”と言いながら更に弄べばいい。
好意を求める恋人ごっこのような問い掛けには、ひたすら同意しておけばいい。
嘘も方便。
よりお互いに有意義な時間を過ごす為には、多少の“盛り”が必要で。
それを忘れず、欠かさずにやっていく事で、心地好い夜を感じられるわけで。
そこに無理は感じなかった。
むしろコロリと騙される滑稽な女を自分自身に“可愛い奴”と思わせる、一種の手段でもあった。
「かずくん優しい」
「かずくん大好き」
女の言葉は麻薬のように、フワフワとした快楽を男に与える。
大した衝動も無い、性欲を満たす為だけに抱く体に。
優しくすることは簡単だった、――っつーのに。
“かずあきくん”
“やさしく”
彼女――千晶に優しく触れる度に、チリチリと、獰猛なモノが疼く。
それを抑えてやんわりと触れていく行為には、なかなかに労力が要る。
強いられるのは、自身の抑制。
それでも手放せない存在に抱く感情は、やはり他とは違うらしい。
最初のコメントを投稿しよう!