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「そういえばさっき、あなたのお友達に会ったわよ」
「あ?」
「オギくん」
「あー、どこいたアイツ」
「あっち。本当についさっき、すれ違ったの」
後方を指差す彼女の顔は、ほぼ無表情。
濃いアイメイクの施されたその睫毛バサバサの目は、ケバいくせして滅多に笑わない。
いや、“くせして”っつーのは少し違う気もするが。
「少しだけだけど、話したわ」
仏頂面の基本パーツは動かない、が。
そう言った瞬間チークとは違う色にほんのり染まった頬を、俺は見逃さなかった。
「ふーん。何か言われた?」
「か、一晃くんが私のこと、好きだとかなんとか。いつもと同じよ」
どうもこの手の話に弱いらしく、どもる派手女。
紅潮させた頬を隠すようにうつむく彼女から、ついと目を逸らす。
あのヤロォ。
「そうか。まあ気にすんな」
何が悪かったのか。
何をしくじったのか。
凄まじく不本意な事に。
最近俺の周りでは、俺がこの女にご執心だと評判だ。
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