期待と懸念

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やはりと言うべきか、外は凄まじい雨で。 土砂降りのそれがカフェの外屋根の上で弾ける水音がハッキリと聞こえて、心底ウンザリした。 確かに予報で夕立だとか何とか言っていた気はしたが、カフェでやり過ごす気満々だった俺は傘なんか持っていない。 それをたった今思い出した身としては、この曇天は何とも恨めしい限りで。 ドアを開けた瞬間サッと温もりを失った気温には、一秒毎に殺意が募るほどで。 なのに、この場から離れてえっつー思いはどうしようもなくデカい。 一瞬家から車を呼ぼうかとも考える。 適当に時間を潰せる場所で停まらせてもいいし、いっそ家に帰るのも悪くない。 が、車が来るまでの間ここで突っ立っている所を荻に見られたらと思うと――… ああ、ねえな。 思い直すと同時に覚悟を決めた。 勢いよく踏み出した矢先、足元の水溜まりが激しく跳ねる。 見なくてもわかる、汚い泥水だろうそれが制服のスラックスに染み込む感覚。 飛び出した先に降り注ぐ十一月の雨は、身震いするほどには冷たく、情け容赦無かった。
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