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目が合ったりしないよう気をつけながら、一瞬だけ。
チラと見た彼女の顔は、やはり憮然としていた。
うねるパサパサの茶髪。
細かいラメの光る肌。
「…………」
「何?」
冗談じゃねえ。
こんな愛想の無い、ケバいだけの女。
こんな女にこの俺が、絶賛片想い中?
何たる不名誉極まりない話。
「イエ、別に」
目敏く気づきやがった彼女の訝しげな視線を、片手を振って軽くいなしながら。
再度見たその睫毛のダマダマしさに、心の中で唾を吐く。
クソッ、なんで噂になる。
「そう、まあいいけど」
誰だ、そんな醜聞、最初に流した奴は。
誰だ、俺の最も望んでなかった状況を、あっという間に作り上げた奴は。
「……何にしてもお前」
「え?」
誰だ、最初に知った奴は。
「周りの言う事、マジで気にすんじゃねえぞ」
誰だ、最初に、
「ええ、そうね。気をつける」
この俺の、無様な一人相撲を見てとった奴は。
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