259人が本棚に入れています
本棚に追加
シオは無類のビール好きだ。
工房の端に設けられた小さなカウンター席に誘われたら、もう断れない。
商品品質チェックと称して瓶を一本開けながら、二人で熱く語った。
瓶がちょうど空になる頃、シオは物騒な匂いを嗅いで立ち上がった。
大切な工房を荒らされるのは正直たまらない。
「ヤン。俺が戻るまで建物から一歩も出るんじゃないよ」
「はぁ? 何だよシオさん。帰れと言ったり帰るなと言ったり」
ヤンはカウンターで掌にあごを乗せながら唇を尖らせる。
シオは加重で痛み出した右太ももに手を当てながら、ふっと微笑して工房の外に走り出た。
ーーーーーーーーーーーーーーー
最初のコメントを投稿しよう!