W-WOLF 第三十八話 宮廷恋歌

101/122
前へ
/1324ページ
次へ
 シオは無類のビール好きだ。  工房の端に設けられた小さなカウンター席に誘われたら、もう断れない。  商品品質チェックと称して瓶を一本開けながら、二人で熱く語った。  瓶がちょうど空になる頃、シオは物騒な匂いを嗅いで立ち上がった。  大切な工房を荒らされるのは正直たまらない。 「ヤン。俺が戻るまで建物から一歩も出るんじゃないよ」 「はぁ? 何だよシオさん。帰れと言ったり帰るなと言ったり」  ヤンはカウンターで掌にあごを乗せながら唇を尖らせる。  シオは加重で痛み出した右太ももに手を当てながら、ふっと微笑して工房の外に走り出た。 ーーーーーーーーーーーーーーー
/1324ページ

最初のコメントを投稿しよう!

259人が本棚に入れています
本棚に追加