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シオは人間に戻って服を着た。
シオを咥えていた金色の狼もだ。
銀色の狼だけは、服を持って勝手口に出ていった。
戻ってきた時は、勝ち気な目をした人間の美女になっている。
ヤンはカウンターに灯りの皿を置いて油を足した。
「頭パニックだぜ。信じらんねぇことばっかじゃん」
首を傾げて唸るヤンに、シオは色の薄い自分の頭をむしゃむしゃ掻きながら謝った。
「言うのが遅くなったけど、俺、ここでこの二人と待ち合わせしてたんだ。巻き込んでごめんよ」
「別にいいぜ。ミルちゃんにも久し振りに会えたし、噂の彼女も見られたしな。だけど伝説の狼だったとは、いやはや恐れ入りました」
四人がカウンターに座ると、もう満席になる。
「シオ、このまま話を進めてもいいのかな?」
ヤンをちらりと見て、ミルはシオの耳に手を当てて耳打ちしてきた。
言いたいことはよく分かる。
「いたらまずいってのか? ミルちゃん」
「あ、いや」
仲間外れの相談になると人間でも地獄耳になるものらしい。
ヤンまでこちらに顔を寄せてくる。
「よしてくれよ。むさ苦しい」
紅一点のサラが、カウンターの端で呆れたように頬杖をついている。
シオが笑いかけると、ふぃっとあちらを向いてしまった。
ミル一筋は変わってないらしい。
「まあまあ、いいじゃないか」
シオはヤンとミルの頭を同時に軽く叩いた。
仲介は成功したようで、ミルは背中に張りつく大きな鞄を外して中をまさぐった。
シオがファーでよく飲んでいた銘柄の缶ビールを何本もカウンターに置く。
「はい、お土産」
シオが缶に触れると、二本だけカキンと冷えている。
「冷蔵庫に入ってたみたいだね」
「二本だけ保冷ケースに入れてきたんだよ。でないと、シオの場合は飲み過ぎるからね。
保冷ケースは太陽光エネルギーで動くからここでも使えるよ。はい、これ」
ミルには完全に性格を把握されている。
まるで子供を心配する母親みたいだとシオは思った。
「小さな冷蔵庫ってとこだね。死ぬほど嬉しいよ、ミル」
シオはミルにがばっと抱きついた。
保冷ケースと缶ビールが宝物のように輝いて見える。
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