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「俺の成すべきことは、国を滅ぼして健康に長生きすることじゃない。
全面戦争を食い止めて国内の改革を進め、未来への道を模索すること。それに有能な後継者を育成することなんだ」
シオの網膜で、腹の子を慈しむアニィの笑みが満面に広がって粉々に砕けた。
長生きする理由はもはやない。
幸せいっぱいのミルやサラには理解できないだろう。
沈黙が流れる。
「前と感じが変わったわね、シオ」
サラがぽつりとシオに評価を下した。
「当然だよ。今は俺の、俺自身の意思で動いているからね」
母親や先代皇帝の理想に縛りつけられていた頃とは違うのだ。
「今の方がいい顔してるわよ」
「……それはどうも」
シオはくすりと笑って椅子に座った。
座り込んだという方が正確な表現だろう。
「なぁ、全然分かんねぇよシオさん!」
ミルは黙ってシオを食い入るように見ていたが、約一名、涙目で喚いた者がいる。
ビール工房を任せている幼なじみのヤンだった。
「格好つけてんじゃねぇよ。どんな病気か知らねぇけど、死んじまったら終わりだろ。
シオさん一人の身体じゃねぇんだ。周りの奴の気持ちも考えろって。
その、できることは協力するからさ」
細長い割に筋肉の盛り上がった腕で、ヤンは雑に目を擦った。
「ったく。どんだけ時間かかるとか、どんな治療するとか、人の話も聞かねぇうちに決め込むのはおかしいぜ」
……人の話を聞かないで決め込む…。
それは、国のトップを走る者としては致命的な欠陥だ。
シオは目から鱗が落ちた気分だった。
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