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思ったより保たなかった…シオは奥歯を噛んだ。
本物の皇帝は不在であると、早くも敵方にばれている危険が高い。
「気にすんなよ、シオさん。グラント様とロイ様がのらりくらりと躱して下さってる。
伝説の銀狼もついてるし、こっちは大丈夫だ。俺はいい服着て旨いもん食って、奥に引っ込んでるだけだからよ。
とにかく心配ねぇから、シオさんはバッチシ元気になって帰ってこいよ」
その明るい声は震えていた。
強がりだと丸分かりだ。
シオが安心できるよう、ヤンは見栄を張っているのだ。
……オレが帰国するまで、果たしてヤンや帝国は持ちこたえられるか?
シオは自問自答した。
「君は俺になりきるんだ、ヤン。いざという時はグラント皇帝補佐かロイ総司令官に通信を代わってくれ。俺がここから指示を出す」
今のシオにできること、それはヤンに的確なアドバイスをして落ち着かせることだった。
「お、おうっ」
ヤンの返事に力がみなぎってくる。
「いつでも携帯端末が使えるよう、日中しっかり陽光に当てて充電するんだ。それと、人工衛星の位置は常に把握しておいてくれよ」
平然を装ってシオは微笑した。
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