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「これじゃ俺、まるで病人みたいじゃないか」
身体が思い通りに動いてくれない歯痒さに、ついぼやいてしまう。
「どこからどう見ても重病人だよ。自覚してよね」
またミルに溜め息をつかれてしまった。
「……僕だって」
個室の窓際に寄って、ミルがカーテンの端を捲りながら呟いた。
「本当は今すぐサラやラヴァの元に駆けつけたい。戦争だってやめさせたい」
室内が暗いおかげで、小柄なミルの背中越しに窓ガラスの外の夜景が綺麗に見える。
街の明かりが色とりどりに瞬く様はとても美しかった。
「じゃあ、なんで君はここにいるんだい?」
ミルは室内を振り向いた。
ベッドに横たわるシオにほほ笑みかけてくる笑顔が、非常灯の薄い光の中でぼんやり見える。
「同じくらいシオも大事だからさ。今、一番危なっかしくて目が離せないのはシオだよ」
口から生まれたようなシオも、そんなことを言われてしまっては黙るしかない。
「僕はサラやラヴァを信じる」
ベッド上のシオは唇を結んで頭の下に腕を敷き、ミルの穏やかだが力のこもった言葉を寝そべったまま聞いた。
「よく考えてほしいんだ、シオ」
ミルは再びシオに背中を見せた。
ガラス窓の向こうの夜景をまた眺めている。
「反乱分子と宮廷の意見主張は食い違っているのかもしれない。
けど、彼らのほとんどは帝国の国民なんだ。主張していることに耳を傾けて、双方共に手を取り合って歩み寄る努力はできないのかな?
僕は、シオと統括が同じ方角を向いてるように感じるよ」
そんなことはない、とシオは瞬間的に反発した。
理想の方向性は全然違う。
「反乱分子の欲張りな要求に耳を傾けたら、肥沃な領土は全く帝国に残らない。第一、武力行使に屈することになる。
しかも今や聖狼連合軍と合体して巨大化、馬鹿力で帝国領土を奪取しようとしている。
統括との溝は海溝より深いよ」
シオは吐く息と共に即答した。
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