W-WOLF 第三十八話 宮廷恋歌

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「統括と和解する気があるなら、智慧を出してほしいんだ。帝国を力で捩じ伏せようとする…強引な戦争をやめさせるための智慧を」  ミルの一言一句に魂がこもって、きらりと光ったようにシオは錯覚した。  不思議だった。 「ミルは俺以上に帝国が嫌いだったよね。それに本来は統括の味方だろう?  帝国側で君をいじめる意地悪な俺の肩を持つなんて、一体どういう了見だい?」 「サラも呆れてる。きっとラヴァもね。でも僕は帝国じゃなくて、今の一生懸命なシオの力になりたいんだ」  ふふっと女みたいに笑うミルの高い声が、ベッドで寝そべるシオの頭上で軽快に響いた。 「父さんやファーの長も僕と同じ意思だよ。  ファーは、eterウイルスのワクチン開発に貢献し、未来を切り開いてくれた鷹のシオに感謝している。恩を返す準備がある。  だからシオは、戦争集結と病気療養のためにファーを存分に使ってくれたらいい。できることは協力する。  僕だって、皇帝の替え玉として奮闘しているヤンには負けないよ」 「ミル」  その口が紡ぐ言葉の欠片は、どれもシオの胸襟に心地よく浸透していく。  勇気を掻き立ててくれる。  ……皆が…俺の力になってくれようとしている…。  この期に及んでミル達を騙そうと考えていた己を、シオは恥じた。  ……それに反乱分子と和解できれば、アニィに再会……できるかもしれなくて…。  その瞬間、シオの中で意思が固まった。 「戦争の種を蒔いたのは帝国自身だ。だから俺は国の代表として、生えた芽を摘まなければならない。もう二度と芽が生えてこないよう、丁寧にね」  布団から出した手をすっと伸ばす。  女のような優しい顔の裏側に強い芯を持つミルもまた、シオに手を伸ばしてくれた。  純粋な希望を宿した声で晴れやかに笑っている。 「いつも回りくどいんだから。『統括と握手したいから分かった。ありがとう』って素直に言えば、さっきみたいにかわいいんだけど」 「頼むから、かわいい、という表現は勘弁してくれ」
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