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【十四】
ママタ帝国の駆け出し皇帝とファーの駆け出し外交官が交わしたその握手は、歴史が大きく動く瞬間だった。
遠く隔てた海の向こうで、そのことを感じ取った者がいる。
「おや、星々がぐわわぁっと動きよった」
流浪の民ロマを象徴する長い布を頭から被り、その肩にハヤブサを乗せる老婆だった。
腰は曲がっているが、しっかりした足取りで、居住する大型商船の甲板を昇っていく。
外は海風が穏やかに吹いていた。
朝日を浴びた海原は宝石のように輝き、空を見上げればうっすらと点滅する赤い光が見える。
ファーの超科学が生んだ遺産の一つと伝説に名をとどめる星、人工衛星だった。
「あの星はいつも動いとるしの。はて…どの星とどの星が動いたんやろ。アニィは感じたかの?」
それ以上は老婆にも感知できない。
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