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エターとは、地殻変動が起こるよりまだ遥かな古代、旧時代のエター=ブラウ博士という人物によって人工的に生み出された種の総称だ。
動物に変身できる人間、といったところだ。
空を飛べず第六感のはたらかない人間、考える頭を持たない鳥、個々では成し得ないことを、人でも鳥でもあるポォは難なくやってのける。
もしも人間とエターが半々で地上に住んでいたら、間違いなくエターの方が地上の王者になっているだろう。
僕が知っているエターはポォだけだ。
本人の話によれば、他にも様々な種のエターが母国のママタ帝国軍に抱えられているらしい。
これ以上教えてくれないのは機密保持のためだろう。
このポォに会うまで、僕はエターという存在を伝説と噂でしか知らなかった。
ポォが唇を突き出す。
「相っ変わらず口の減らないガキね、あんた」
それは、僕を密命に縛りつけるポォに嫌気がさしているからに他ならない。
ポォさえいなければ、僕はさっさととんずらして、自分のために有意義な時間を過ごすことができるのだから。
口にこそ出さないけど、自然に鼻が「フン」と笑ってしまった。
ポォの頬が再び引きつっているのが見えたけど、そんなのは無視だ。
「まあいいわ。仕事の話をしましょ」
「残念ながら話すことはないよ。未だ手がかりはゼロ。現在移動中」
僕はすかさず肩をすくめ、溜め息をついてみせた。
「そうなの」
「手がかりなんてあるわけがない。金狼や銀狼が人々の願いを叶えてくれるなんて、所詮おとぎ話だ。それを真に受けて『不老不死にしてもらおう』なんて、馬鹿げた皇帝……」
頭上から何かが超高速で降ってきて、僕の話を中断させた。
横に飛びのいて地面を見やる。
若葉のついた小枝が、微震しながらそこに突き刺さっていた。
「皇帝陛下を馬鹿呼ばわりすると、あんたの命がなくなるわよ」
ポォが二本目の小枝を手折りながら言った。
忠誠心の厚い奴はこれだから困る。
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