潜入

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「や、やめてくれ!金なら払う。だから命だけは!」 そう懇願してくるのはどこにでもいそうな小太りな男。他と違うのは着ている服が宝石なんかでギラギラしているところだろうか。金にモノを言わせ、人をこき使い自分はその上にあぐらをかく。日本人社長の典型的なクズの例だろう 「あんたはもう"いらない"。だからここで終わりだ」 せめて死ぬときくらいは安らかに。心で十字を切り、俺は突き付けていた銃の引き金を引いた。 ―――パンッ――― 乾いた音があたりに響く。瞬間、あたりが硝煙と血の匂いに包まれる。 「対象の制圧、完了」 俺はそう呟いて一枚のカードを死体に乗せる。"組織"が動いたときに乗せるカードで、報道規制が自動でかけられたり、警察の捜査が入らなくなったりする便利なものだった。カードが見える位置にあるのを確認し、そのまま電話をかける 「対象の制圧は終了した」 「そう、ご苦労さま。で、また殺したの?」 かけた相手は姉だ。名前は、なかった 「それが一番手っ取り早いだろう?」 「今回の命令は、"彼"に余計なことをしないように忠告せよ。だったはずだけど?」 「対話が不可能と判断された場合は殺してもいい。俺はそう言われた」 「確かに"彼"と対話は不可能に近いものがあるけど……」 "彼"は絶対に下にはつかない。それどころか対等ですら嫌う。必ず自分が上にいないと気が済まない男だった。 「人間なんてみんな同じだ。いくらでも代わりがいる。ここに座るのは"彼"じゃなくてもいい。そうだろう?姉さん」
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