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君は私が見詰めるのが長かったからか、そっぽを向き又ウトウトし始めた。
(そんな事はしない。)
当たり前の事だ、そうだろう。時々自身に宿る残虐な思いは、君への時にのみ私の胸を痛ませた。安易に人を殺す様な生活に身をやつし、物であろうはずの無い対象を簡単に傷付ける想像は、自分を見失いそうにすら成る。
かき消す為に君の髪を撫でながら、どんな夢を見ているのか知りたいと思い、心を転換させた。君の夢は恐らく、色の美しい世界なのだろう。君の白い手が下ろした筆から生まれる世界に似た、そんな夢なのだろう。
(そしてその世界を私に教え、私をも作った。)
私と君の外側に、冬の終わりの日溜まりが降りていた。
(噛みきるに造作無い唇…か…。)
君の赤い唇に目を下ろし、親指でなぞってみる。
(大丈夫…傷付けたりしない…。)
その赤も、長い睫毛の黒も、大切にすべき私のものだ。悪魔に身を売ったとて、それは変わらない。
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