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そこは人里離れた診療所にも関わらず、混雑していた。医者が一人に弟子が二人、それでも仕事が早く、待つには待ったが思った程では無かった。
「健康体ですな。」
白髪の医者は私を見た瞬間そう言うと、笑った。
「私では無い。私の家族が気の病で、子供還りが酷いので相談に来た。」
家族と言った自分に、多少躊躇った。
「はいはい、症状は?」
医者はカルテを出して、海外の言葉でペンを走らせながら、時々私を見た。
「子供の様に成る…直ぐ泣いたり機嫌を損ねたり、言葉遣いや内容、立ち振る舞い、全てだ。家事だけはするが、それは幼い頃からしていた様だから、やはり子供に還っている。」
医者はペンで文字を埋めていく。
「症状が出始めた切っ掛けみたいな物は御存知ですかな?」
そう聞かれ、私は息を飲んだ。痛烈な痛みが胸を走ったが、話さねばなるまい。
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