8人が本棚に入れています
本棚に追加
その男の連れは千鳥足であり、帯刀が格好だけの姿勢も成ってないカスであったが、その男の足取りや姿勢はそこそこ正常だった。繁華街から外れたので、後ろから徐々に距離を縮めた。
楽な仕事の部類だった。恐らく連れよりも出来るであろうその男を、邪魔に成らない様先に斬り倒し、即死の手応えは十分だった。色を失った連れが逃げようと、足を絡ませながら叫んでいる。
「煩いな。」
と声を掛けてやってから首を跳ねた。
その道の先の裏路地に入ると、コウノトリが待っており、返り血を浴びる為、何時も上着を用意していた。
「馬に水をやっておきましたから。」
相変わらず気の利く男だ。私は無言で穂立の綱を取り、乗った。コウノトリが軽く会釈をしたのを合図に歩を進め、家路を急いだ。月は随分と明るく、白みを帯びて発光している。
(春が近いのか?)
坂道を下りる際の風を、何となくそう感じた。
最初のコメントを投稿しよう!