唇の赤色

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二月十一日、目覚めると君は床に居なかった。空の家を巡って庭へ行き着くと、君は庭の隅でかがみ、好きなスケッチをしていた。私に気付くと君は、朝食を出す準備をぼちぼちと始めた。 食べてる間君は傍に居るので、世間知らずな君に、私は外の国の話をしながら食事をした。この国が鎖国をして千年の月日が経ち、外の国はまるで別世界に成っている…といった内容のもので、君は楽しそうに聞いていた。 「外の国へ行ってみたいか?」 と問うと君は 「怖いから行きたくない。」 と答えた。 「そうか。」 と私は笑った。 片付けが終わると君は、スケッチの続きを始め、私は趣味の読書をした。外に居て寒かったのか君は、スケッチが終わると私に近付き、膝を枕にしてウトウトし始めた。私の読書も区切りがついたので本を閉じ、君を見ていると、ぽつぽつと思い出す過去の場面がある。 (良くこうして居れたものだ。) などと、不思議な気持ちがした。
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