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孤独な魔王の話
魔界では魔王に敵う者は、抗う人間しかいない。それを、勇者と呼ぶ。
長い間をかけて純血を重ねた血は濃くなり、いつしか魔王と勇者との力の差は歴然とも言えなくなった。
若く聡明な前魔王の子は、僅か20歳で魔王に就いた。
言葉を掛けられるものは賛美ばかりで、争うと言う事がない。それはつまり、抑えつけられるような無関心の中で、成長など出来る筈もないのだ。
若い魔王は、日に日に勇者に対しての憧れを募らせる。
さながら、自身が囚われの身であり、勇者が救護に来てくれる。そんな幻想さえ抱いた。
しかしそんな魔王の懸念も空しく、魔王が王座につき更に半世紀が過ぎた。
その間、勇者が魔王の城へたどり着けたのは6人。1階で力尽きたのは3人。2階で力尽きたのは1人。3階で力尽きたのは2人。魔王の間は、4階の最奥にある。
勇者への羨望は、益々募った。
側近の魔族と共に、魔王は対策を練る。
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